はじめに
学習障害(LD)は、発達障害の一種です。
書字障害、読字障害、算数障害と大きく3つに分かれており、例えば、漢字を書くことが難しい、意見を声に出して発表できない、数の概念を理解しづらい、などといった症状があります。
では、もしも学校現場で学習障害を持つ生徒がいる場合、どのように対応していくべきなのでしょうか?ここでは、学習障害を抱える子どもたちに対して行うべき配慮の指標ともなる、個別教育計画(IEP)について解説します。
個別教育計画(IEP)とは?
個別教育計画(IEP)とは、「Individualized Education Program」の略で、各々に合わせた指導目標や指導方法などをまとめた計画書のことを指します。障害のある児童生徒一人ひとりのニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくことが目的です。
ちなみに、アメリカでは障害を抱えている児童生徒に対し、このIEPと呼ばれる個別教育計画を作成し、特別な教育を受けさせることが法律で定められています。公的文書として作成されるため、障害を抱える児童生徒やその保護者などは、法的に保護を受けることができます。
日本では各自治体が個別教育計画の書き方例を発表しているため、それらを参考に計画書をまとめることができます。生活環境や課題、検査の記録などと併せて、保護者からのアセスメント、当該児童生徒の学校での様子などを参考に作成していきます。
なお、この作成は、児童発達支援管理責任者がアセスメントを行って作らなければならないことが、厚生労働省により義務付けられています。
学習障害における個別教育計画
では、学習障害をもつ児童における個別教育計画には、どのようなものがあるのでしょうか?書字障害、読字障害、算数障害、3つの観点からその内容例を挙げていきます。
書字障害
書字障害とは、自分の考えをノートなど紙媒体へ書き出すことに困難を感じる障害です。一口に書くことの障害といっても、単語、文法、句読点、手で書くことなど、個人個人によってさまざまな問題があります。学校で学習する場合、例えば黒板を写すのに他児童生徒の何倍も時間がかかってしまうといった課題点が出てきます。その場合、教室の配置を優先的に前のほうにしたり、テストの時間を他児童生徒よりも長くしたりといったことを個別教育計画にまとめていくことが可能です。
読字障害
読字障害とは、ディスレクシアとも呼ばれ、読むことの難しさを指す障害です。ページ上で見た文字とその音を結びつけることに困難を抱えており、その結果、音読の授業が難しいなどの課題点があります。話し言葉を音節に分解するのも苦手なことから、文章の変なところで区切って音読してしまい、注意を受け、自己肯定感が下がっていくといった点も問題視されています。ディスレクシアの生徒に対しては、文字が読みやすい専用のプリントを用意するなどの個別指導計画が作成できます。
算数障害
算数障害とは、数字に関する概念の学習や、数学の計算を行うための記号や関数の使用が困難である障害です。数的感覚、計算、数学的推論など、算数と一口にいっても症状例は様々ですが、個別教育計画では、例えば数の概念を理解することを目標にスモールステップで学習に取り組むなどといった計画を立てることが可能だといえます。
おわりに
さて、今回は、学習障害における個別教育計画について解説してきました。
日本ではまだまだ個別指導計画は浸透していませんが、このようなサービスを代替する民間会社も出てきました。
個別の事業に対する適切なサポートがあれば、将来のキャリア選択における幅が広がったりすることに繋がりますが、まだまだ日本の教育現場では人員的にも難しいようです。
学校で摂りいれられるのは自治体や国の動きを待つほかありませんが、自宅学習や不登校・ホームスクール時には
IEPに倣って、個別の困りごとに合わせたカリキュラムで勉強できるといいですね。